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異様なる普遍

ヴェルナー・ヘルツォークの映画が大好きだ。でも出てくる人物は皆、奇妙である。例えば『小人の饗宴』という映画は、全員が小人だ。なぜか、ある施設で収容されている小人達が反乱を起こす。そして小人達がさらに弱い立場の小人仲間や動物を虐めるという映画である。最初は、その異様な光景に違和感と不快感を憶える。しかしだんだん慣れて、いつの間にか自分が小人の視点になっている。そして気づく。これは我々の日常ではないか。自由を奪われ閉塞感を募らせた弱者がさらに弱者を虐待する。つまり、映像的には異常だけどテーマは普遍なのだ。でもフツウの事をフツウに描いても映画的には面白くない。フツウの事を極めて異様に描いて初めて、テーマ性がハッキリと浮かび上がるという監督のスタイルであり意図なのだ。他にも『カスパーハウザーの謎』という映画も、主人公は生まれたときから洞窟で育てられ、青年になって初めて外に出され、急激に人間として成長して行くという実話に基づいた話だ。やや精神障害を持っている俳優が主演だから、妙にリアリティがある。しかし異様だが純粋な主人公は、生まれたての目で世の中の「常識」に対して疑問を投げかける。それに対して科学者や宗教家などの知識人はうまく答えを返せない。これも監督の明快な意図が見えて痛快ですらある。『緑のアリが夢見るところ』では、原住民アボリジニの目から、オーストラリアの油田を狙う文明人を批判する。ヘルツォークの作品は、異様で壮大で独特のシュールな美学を持っている。   
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『フィッツカラルド』アマゾンの奥地にオペラ座を作ろうとする野望を持った男の話。本物の船が山越えをする! 
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『カスパーハウザーの謎』 私にとっては衝撃的だった作品。名作というか迷作というか。
by aoyukibon | 2010-05-28 20:11 | 映画あれこれ

つれづれなるまま。ちょっと気になる風景


by aoyukibon